○水田や稲は水をきれいにする働きも持っています。
4月の下旬から5月の上旬にかけて田植えされた稲は、夏の猛暑を乗り越えて順調に生育
し実りの秋を迎え、印旛沼の周辺を黄金色に染め収穫されました。 今頃は、風味豊かな新米が皆さんの口に運ばれていることでしょう。
水田は、おいしいお米を生産する場ですが、お米を育てる過程で、いろいろな働きをしています。今号では、その一つである「水をきれいにする働き」についてお話ししたいと思います。
印旛沼の水は、ご存じのように大変汚れています。とりわけ、アオコの発生が大きな問題なのではないでしょうか?アオコの原因は印旛沼の水にチッソやリンが多く含まれていることです。水田にはこのチッソやリンを吸収する働きがあります。
水田の土壌は、図のように「心土」「すき床」「作土」が層を成しています。
作土は「酸化層」と「還元層」によって構成されています。空気中の酸素は、水田に貯まった水に溶け込み「酸化層」のアンモニア分を硝酸態チッソに替えます。この硝酸態チッソやリンは稲の育成に必要な養分として稲の根から吸収され(もちろん水田の畔や水路の雑草にも吸収されます。)ますが、吸収されずに残った硝酸は、酸素が供給されない「還元層」の中で還元され、窒素ガスとなって水田の水をとおり、空中に放出されます。
雨が降ると台地の畑や、住宅地(開発の大部分は台地で行われている。)からの排水は、側溝や斜面緑地を通過して水田や水田と水田を隔てる小排水路に排水されます。この排水には、アオコの原因になるチッソやリンが多く含まれていますが、雨水は炊事や風呂・トイレの水のように下水道に流れたり、浄化槽で処理される訳ではありません。
ですから、もし印旛沼の周辺に水田がなかったら、このような水をきれいにする機能は発揮されませんので、もっとひどい汚れになっているのではないでしょうか?
営農面にも問題はあります。高い生産性を維持するためチッソやリンを含む化学肥料を投入してきました。しかし、肥料の投入量を減らしたり、施肥方法を全層施肥から側条施肥徐々に改めたり、更には、肥料分を多く含む代かき時の濁った水を流さないようにするなど、徐々になるべく水質に負荷を与えないような努力がされています。
|